今回は、お薬はいつ飲めばいいかについてお話しします。
お薬は、食後や食前、就寝前というように、服用するタイミングが色々異なっています。いつ服用するかはそのお薬の性質や、効かせたいタイミングによって設定されています。まずは簡単にそれぞれの説明をします。
「食後」
お薬の服用方法で最も多いのがこの用法です。食後は普通、食事を食べてから30分後を言います。
当然、食後は、食べ物が胃の中に多くある状況です。食べ物のおかげでお薬の成分が胃壁に触れにくくなるので、胃への刺激がある成分を含む場合、胃を荒らすなどの副作用が軽減されます。
また、多くのお薬の成分は油に溶けやすい性質を持っていますので、食べ物の油脂分に溶けて吸収されやすくなることが分かっています。
ちなみに、食事ができなかったからといって薬を飲まないと、体内のお薬の量が低下してしまい、効果が得られなくなってしまいます。クッキー1枚だけでも食べると、食後に近い状態になり、胃の保護にもつながります。多めのお水で服用するのも胃の保護という点では有効です。
「食前」
食前とは、食事の20?30分前のことです。
食後のむかつきを抑える制吐剤、胃の調子を整える食欲増進剤等が、食前の服用になっています。
また、多くの漢方薬も食前(もしくは食間)の胃が空っぽの状態での服用がいいとされています。
漢方薬は、配糖体という有効成分と糖が結合した構造となっており、それが腸内細菌によって分解され、単体の有効成分となり、吸収されることで効果をあらわします。
食後の場合だと、腸内細菌の働きが食物の分解にも使われてしまい、漢方薬成分の分解が十分できなくなることによって、効果が弱まるといわれています。
ちなみに「食直前」とは、まさに、「いただきます」の直後に服用する事です。食べ物に含まれる糖の吸収を穏やかにする糖尿病薬や食後の血糖値を下げるお薬等にこの用法が使われます。
「食間」
文字通り、食事と食事の間という意味で、食事を終えてから約2時間後が目安です。食事の最中ではないことはお分かりですよね(笑)
食間すなわち食後2時間では、胃の中が空っぽです。直接、胃粘膜に作用して粘膜の修復や保護をするお薬は、食べ物がない方がいいので、食間に服用します。
また、胃の中に消化するべき食べ物がないので、この間は、胃酸が出ていない状況になっています。ということで、胃酸の影響を受けてしまうお薬も食間に服用する事があります。(ただし、このようなお薬は胃酸の影響を受けないようにコーティングされており、食後に飲んでもいいように製剤的に工夫されているものが多いです。)
「就寝前」
就寝前に服用する理由は2~3のパターンがあります。
1. 睡眠薬など眠るために使うお薬
2. 副作用に眠気があるような場合(抗アレルギー薬など)
3. 理論的に夜飲んだ方が効果が高いと思われる場合(消化性潰瘍のお薬など)
以上のように、いろいろな理由があって、服薬のタイミングは決められています。定められたタイミングに服用しないと期待する効果が発揮できないばかりか、副作用が起こってしまうこともあります。
話は変わって、お薬には1日3回とか1回とか服用する回数が決められています。
お薬は一定の量が体の中にある(血中濃度が一定以上ある)状態で効果が表れますので、服用回数はお薬がどれだけの時間、体の中にあるかにより決められています。すなわち代謝・排泄が早いものは、回数を多く服用しなければなりませんし、体に長くとどまるお薬は、1日1回でも、効果があることになります。
なので、用法はきっちりと守って服用しなければなりません。
…と、患者さんには指導させていただいているのですが、筆者も含め、飲み忘れをしてしまうことがよくあります。
先ほど、お薬は一定の量が体の中にある状態で効果があるとお話しましたが、その量はある範囲を超えても、下回ってもいけません。
飲み忘れがあると、有効な量の範囲を下回って効果が現れませんし、一度にたくさん飲んでしまうと、有効な量の範囲を超えてしまい、副作用が引き起こされる可能性が高くなります。
でも、飲み忘れたら、どうするか?
あくまでも、ある程度安全な領域の広いお薬で、食後に使うお薬の場合であることを前提にしてですが…
筆者が大学生の頃、教授から教わったことは、
「飲み忘れを思い出したら、その時点ですぐ飲んで、その次に飲む時間を飛ばして、最後は寝る前に飲む」でした。
具体的には、以下の通りです。
1日3回のお薬の場合
朝の分を飲み忘れて昼食までに思い出した場合:その場ですぐ飲んで、昼食後は飲まず、夕食後と就寝前に飲む。
昼の分を飲み忘れて夕食までに思い出した場合:その場ですぐ飲んで、夕食後は飲まず、就寝前に飲む。
夜の分を飲み忘れて寝る前までに思い出した場合:その場ですぐ飲む。
1日2回のお薬の場合
朝の分を飲み忘れた場合、昼から夕方までに飲む。夕食後は飲まず、就寝前に飲む。
夜の分を飲み忘れて寝る前までに思い出した場合:その場ですぐ飲む。
1日1回のお薬の場合
寝る前までに思い出したらその場で飲む。
有効な量の範囲を超えてしまうと副作用が起こる可能性が高くなりますので、間違っても、2回分をいっぺんに飲むなんてことはしないでください。
また、糖尿病の薬のように食事の影響を受けやすいお薬の場合、自己判断は禁物です。
そういう場合は、飲み忘れた時にどうしたらいいのかを、予め医師・薬剤師に聞いておくのも、一つの手ですね。
©2015 Medimu